31 しんじま丸

片道5分の船旅満喫

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しんじま丸は、桜島とその沖約1.5㎞のところに浮かぶ新島とを結ぶ行政連絡船だ。
所要時間は約5分、料金は片道100円。
日・水・金曜日の週3日、浦之前港を10時5分・11時35分・15時5分に出発する1日3往復が運航している。
先日、有意義な休日を過ごすべく、しんじま丸で旅に出た。

起点である浦之前港には、行政連絡船へ特別な案内看板があるわけではない。
船首と船尾に「しんじま丸」と記された船へと進み、船長に声をかけて乗り込んだ。
出港すると、徐々に新島が近づいてくる。どの船もそうだが、目的地に着く前のわくわく感はたまらない。
陸上の交通機関にはないあの高揚感は、船に乗り慣れていないからか、船という乗り物が元来持つ魅力なのか?
あっという間に新島港に到着だ。

新島での滞在時間は約8時間だ。(※当時のダイヤは7時と15時5分の一日2往復だった)。
かつては200名以上が暮らしたという集落にお邪魔したり、海岸沿いを一周したりと、島内をじっくりまわるとおもしろい。
ダラダラと、いや失礼、有意義に休日を過ごすために来たこの日のボクは、波打ち際で読書を、
暑くなったら海へ潜るという贅沢な過ごし方を選んだ。

時折、桜島がゴオオという轟音を上げたり、煙を吐き出したりする。
その姿を見て、桜島はやはり生きた火山なのだと実感する。
踏みしめる新島もまた、海底噴火で生まれた島だ。
さらに、錦江湾奥全体も巨大噴火が作った姶良カルデラと呼ばれる陥没地形である。
この島から見える景色のほとんどは、火山が作り出したものなのだ。
そんなことを思わせぬほど静かで穏やかな景色である。ま、そんな難しいことは忘れて今日はのんびりと過ごそう。

15時をまわり、帰りの船が新島港を出港した。
西に傾き始めた太陽が肌を焼く。
間もなく桜島に到着だ。船は減速し、接岸する。
新島の旅は終わりを迎えた。

『南日本新聞』 2013年8月13日「桜島ルーキー日記(しんじま丸)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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