25 さくらじま白浜温泉センター

心落ち着くお手頃空間

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鹿児島は、全国屈指の温泉県である。
都道府県別に見ると、源泉数は全国2位。
鹿児島市には源泉が約270あり、県庁所在地の中では日本一の数なのだという。
県内どこへ出かけても、たいていのところで温泉を目にする。
鹿児島に住んでいる限り、温泉に困ることはないに違いない。
桜島にも、もちろんある。
さくらじま白浜温泉センターは、島の北部に位置する温泉施設だ。

職場のスタッフには、おそらく気づかれていないと思う。
毎月26日には、少し浮き足立っていることを。
なるべく定時に帰れるよう、早めに仕事を終わらせる。
「ふろの日」だからだ。
同センターでは、その日は100円で入浴することができるのだ。

浴場には、源泉かけ流しの大きな浴槽。
寝湯、気泡湯、電気風呂、水風呂、遠赤外線サウナ。
眺望バツグンとはいかないが、風が心地よい露天風呂も備えている。
これがナント300円で利用できるうえ、ふろの日には100円となるのである。
こんな立派な温泉を、こんな低料金で満喫できるなんて。
他県では、ちょっとこうはいかないだろう。

絶えず注がれる、黄味を帯びた温泉。
立ち上る湯気。
一日の仕事を終えた人々の、にぎやかな会話。
風呂桶が「カラン」と音を立てる。
館内に流れる演歌調の音楽はどこか懐かしく、心を落ち着かせてくれる。
桜島の日常をありのままに教えてくれるような、居心地のよい空間だ。

館内には、無人販売スペースが設けられている。
地元産の旬の野菜や生花が並ぶため、これを楽しみに訪れる人も多い。
同センターは、住民の交流の場にもなっているのである。

気が向いたら、ちょっと近所の温泉へ。
桜島へ来てから身についた、新たな習慣のひとつである。
車の中には、もちろん温泉セット。
これでボクも、立派な鹿児島県民に近づいたに違いない。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年5月14日「桜島ルーキー日記(さくらじま白浜温泉センター)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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