10 退避壕

ユニークな形や造り

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桜島には、多くの退避壕(ごう)が設置されている。
これは、噴火に伴う噴出物から身を守るためのシェルターだ。
生きている火山ならではの建造物である。

形や大きさはさまざま。誠に勝手ながら、大雑把に分類してみると次のようになる。
戸のない大きな物置のような「物置型」、半円状の空間が作られた「トンネル型」、遠くからは小さな住宅に見える「一軒家型」など。
さらに、ひとつずつじっくりと見比べると、もっとたくさんの違いがあることに気がつく。
今日はユニークな「物置型」退避壕を紹介したい。

まずは、国道224号線沿い、大正溶岩原の上にある3つの退避壕だ。
これらの特徴は、周りをぎっしりと溶岩で覆われていること。
景観に配慮して、このように装飾されているのだろう。
確かに、無機質なコンクリートのままよりも、荒々しい岩をまとっていた方が桜島らしい。
写真のように、積まれた溶岩の上からは、クロマツなどの植物が成長を始めている。
いよいよ周囲の溶岩原と同化しそうである。

松浦町の退避壕にも注目したい。
こちらは、バス停と一体化しているのだ。
壕の内側には、「松浦」という停留所名や時刻表が張られ、椅子もちゃんと置かれている。
バスを待つ間の安全を考慮して、このような造りになっているのだろうか。
雨風もしのぐことができ、使い勝手は悪くなさそうだ。
待合所が退避壕であるバス停など、全国探してもそうないに違いない。西道や薩摩赤水(赤水麓)バス停も、よく似た造りをしている。

各退避壕は、噴火被害の防止という共通の役割を果たしつつも、それぞれ個性にあふれている。
島内を一周すれば、たくさんの壕に出合えるはず。
道路脇の景色もちょっと気にしながら、桜島を巡ってみてほしい。

みなさんのお気に入り退避壕情報求む。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2012年10月2日「桜島ルーキー日記(退避壕)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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