20 ツバキ

降灰に耐え強く美しく

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ツバキの花が見ごろである。
島を一周すれば、街路樹として植えられたヤブツバキをあちこちで見ることができる。
集落に入れば、住宅や畑の区画境界に使われていたり、ツバキ栽培専用の畑があったりと、やはりさまざまな場所で出合う。
桜島は「ツバキの島」といっても決して間違いではないだろう。

分厚く濃い緑色をしたつややかな葉。
その中に顔を出す赤い花は、控えめながら気品にあふれている。
冬に花が咲き、秋になれば実がなる。
この種から採れるのがつばき油だ。
主に髪や肌の手入れに使われる上質な植物油である。
化粧用はもちろん、食用、燃料用など、古くから様々な用途で日本人はこの油を利用してきた。

桜島にツバキが多いのには理由がある。
1970~80年代、南岳の噴火活動は激化し、連日ドカ灰が麓へ降り続いた。
農作物は大きな被害を受け、農業をあきらめざるをえなかった方も少なくなかったという。
そんな中、ツバキは降灰をものともせずに美しく花を咲かせ、実をつけることをやめなかった。
そこに目をつけた旧鹿児島市や旧桜島町によって、たくさんの苗木が無料配布され、各地に植えられた。
こうして桜島は「ツバキの島」となり、全国有数のつばき油生産地となったのだ。

もちろん、それ以前から島内には自生していた。
黒神埋没鳥居の近くには、「百年ツバキ」とよばれる木がある。
大正噴火を耐え抜いたといわれているから驚きだ。
ここは、大正噴火で大量の火山灰や軽石が積もり、厚さ2ⅿにもなった場所。
現在も変わらずに呼吸を続けている。

木はその場所を動くことも、降灰を振り払うこともできない。
過酷な環境の中、与えられた土地で黙って咲き続けるツバキの姿は、人々を励ましてきたことだろう。
桜島の強く美しい特産品として、これからもずっと大切にしてゆきたい。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年2月19日「桜島ルーキー日記(ツバキ)」 ※筆者本人により一部加筆修正

桜島のつばき油の製品やご購入については、桜島ミュージアムショップ(SAKURAJIMA MUSEUM SHOP)をご覧ください。

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